去年の9月に劇場の屋根を全面改修し始めて、ようやくこの4月に終わることができた。半年以上かかった!
正面玄関庇部分から始め、庇と続きになっているトイレ部分、舞台控え屋根、母屋屋根と面積の小さい部分から大きい部分に移っていった。
なるべく瓦を下に降ろしたくないので、大体半分ずつ移動させながら、土をどけたり、野地板を修理したり、ルーフィングを張ったり、断熱材、桟などを取り付け、瓦に一枚ずつ穴開けてステンレスビスで固定していく。瓦総数6000枚あまり。
当たり前のように日本の風景として馴染んでいる瓦屋根。当然のごとく屋根の上に瓦が載っているが、どの屋根も屋根職人が一枚一枚コツコツと並べたものなのである。
屋根をなんとかしなければいけないなと劇場改修当時から思っていたが、業者に頼むだけの財力もなく、屋根を外から内から眺めては、雨漏りと、風化した屋根土が降ってくるのをなんとかする方法を考え考え、迷い迷って三年間思い悩んでいたが、そう、結局業者に頼んでも誰かが一枚一枚コツコツと瓦を葺いていくのだ。だったら自分でコツコツやるしかないと。
図書館で日本の木造建築や瓦に関する本を借りたり、ネットで瓦に関することを調べたりと情報収集する中で、日本の瓦は伝統的のようであり、また様々な工夫や安全基準などをもとに進化している分野であるということを知る。
その中で、様々な台風や震災などの経験から、科学技術的データに基づいた瓦屋根の設計・施工の方法を全日本瓦工事業連盟主導でまとめた「ガイドライン工法」というものがあり、ネット上で公開されてもいる。劇場屋根も基本的にはガイドライン工法をもとにして施工している。
屋根工事が始まると、劇場屋根のあまりにもの存在感に圧倒されつつ、来る日も来る日も手順のイメトレをし、作業でヘトヘトになり、町をゆけばやたらと瓦屋根ばかりが気になるという屋根クレイジーな状態である。古くてボロボロの屋根ほど気になってしょうがない。おかげで今年の猟期は集中して鹿やイノシシが獲れなかったほどである。
寒くなり始める頃から開始し、暑くなる前にはなんとか決着をつけようと来る日も来る日もコツコツと作業が続き、時には人に手伝ってもらい、時には一体俺は何をやっているのだろうと客観的になったりとしつつ、なんとかなりました。
どの作業も一様に大変で、どの作業が一番大変だったのか言えないような感じなのだが、なんだか遠いところの旅から帰ってきたような気分がしている。