紀伊半島 BOOK marché内イベント 『つつんで、ひらいて』上映会
2024年 12月21日(土)1回目13:00〜14:45 2回目17:00〜18:45 映画上映後にミニトークあり
22日(日)17:00〜18:45
各回大人1500円 高校生以下無料
Introduction
言葉を五感へとどける紙の本。
1万5千冊を手掛けた装幀家・菊地信義と、本をつくる人々の物語
たとえば、書店で平積みになった新刊本を手に取るとき。それも必ずしも自分のお気に入りの作家のものではない本にふれるとき。あなたを「動かしている」ものは何だろう。それは本の装幀かもしれない。
本の「かたち」を伝え、本の「内実」をあらわし、本の「本質」をビジュアルにするブックデザイン。本に内在する「肌ざわり」や「ぬくもり」を、具体的な表層としてうつしかえる装幀の仕事の全貌は、かなりの頻度で本に接している読書家の方にもほとんど知られてはいない。
是枝裕和、西川美和率いる映像クリエイター集団「分福」に籍を置き、柳楽優弥主演の劇映画『 夜明け』で鮮烈なデビューを飾った広瀬奈々子監督がはやくも完成させた第 2 作は、ドキュメンタリー。日本を代表する稀代の装幀家、菊地信義にカメラを向けた。
主に明朝体文字に独特の変幻を付加し、それをハッとするような配置と、イマジネイティヴな余白、静謐にして豊かな色と画にくぐらせることによって、唯一無二の「本・世界」の入口に立たせる菊地の装幀。 デザインの主を知らなくても、彼が手がけた本に心惹かれた経験は多くの日本人にあるはずだ。
紙を選ぶ、文字を選ぶ、紙とインクを合わせる……本づくりは、そんなひたむきな作業からはじ まる。映画は、菊地の「創造」の過程を、発想から製本にいたるまでの短くない期間にきめ細やかに寄り添いながら、きわめて興味深い人間・菊地信義の深層にも接近していく。
映画のもうひとりの主役は「本」そのもの。作家の生み出した作品が、本というかたちになっていく光景を、目に見せてくれる。作家、編集者へのインタビューから、印刷、製本の現場へ。それぞれの場所にプロフェッショナルはいる。菊地の、ときに無謀とも思える提案に、それぞれの職人たちはこれまでに積み重ねてきた経験と知恵で「たったひとつの答え」を出していく。わたした ちは出逢う。本をつくる人々すべてに共通する、本への「愛情」 に 。
一冊の本には、様々な英知がこめられている。そうして、本屋の店頭に並び、本を 読む人々を待っている。
本を読む。気になるページに折り目をつける。紙のめくれる音を聴く。誰かに読み聞かせる。「紙の本」は五 感 に「語りかける」。豊かな可能性に満ちた何かであることを、わたしたちに気づかせる。
本をつくる冒険。本を体験する冒険。
重なりあい、響きあう「紙の本」の冒険が、この映画からはじまる。
Story
文字の書かれた紙を、くしゃくしゃにして、ひろげる。丁寧に平らにしてコピーをとる。満足げに眺める。男がなにをしているのか。わたしたちはまだわからない。
彼の名は菊地信義。装幀 家である。菊地はいま、新しい本の表紙にふさわしい文字を創っている。くしゃくしゃにして、ひろげ、コピーすることで、文字はかすれ、独特の風合いを醸し出す。これもブックデザインにおいては、とても重要な仕事のひとつだ。
見つめるのは、菊地の指先から生まれる、製本にいたるまでの「ものづくり」の過程。そこから「本を 装幀 する」行為の一部始終が具体的に浮き彫りになる。それと同時に、菊地の担当編集者 や弟子のデザイナーらの証言が、頑固に一途に、本そのものと向き合い、変わりゆく時代の中で変わらない仕事を掴みとる人間の姿を映し出す。
「デザインは設計ではなく『こさえること』」と語る菊地信義。銀座の事務所、そして鎌倉の自宅。彼の行動、言動を慈しむように追いかけていく。
監督・編集・撮影 :広瀬奈々子 音楽:biobiopatata エンディング曲:鈴木常吉 製作:バンダイナムコアーツ、AOI Pro. 、マジックアワー 、エネット、分福
企画・製作:分福 配給:マジックアワー
(C)2019 「 つつんで、ひらいて 」製作委員会