これまで30年に渡りインドネシアの辺境の島で鯨漁の取材をしてきました。訪れるたびに懐かしい日本の鯨村を訪ねるような気持ちになりました。それは、濃密な人と人との関わり、そして人情。男も女も助け合い、鯨を獲ることで一体となったコミュニティ。伝統の船造り。驚くほど手際の良い解体の方法や分配のシステム。そしてその中には勇魚獲りの熱い血が流れと深い信仰が支えていました。よく捕鯨文化という言葉が使われますが、これこそ和歌山をはじめ日本各地の勇魚獲りにかつてあった、あるいは今につながる捕鯨文化と共通のものではないかと思います。そんな勇魚獲りの本場で、この「くじらびと」が上映されることをとても嬉しく思います。国こそ違いますが、この映画を通して先祖の方々が、かつてどのような気持ちで身ひとつで巨大な鯨と格闘していたのか、思いを馳せていただくことができれば幸いです。また個人的には串本の方々がこの村の様子を見てどのように感じられるかとても興味があります。機会があればぜひお教えください。どうぞよろしくお願いします。
石川梵
田並劇場『くじらびと』上映会
2022年2月27日(日)
1回目 9:00開場 9:30〜11:30 2回目 13:30開場 14:00〜16:00
大人1500円 小中高生500円 未就学児無料
インドネシア・ラマレラ村で、伝統の捕鯨を400年間続けながら暮らす人々を捉えたドキュメンタリー。インドネシアの小さな島にある人口1500人のラマレラ村。住民たちは互いの和を何よりも大切にし、自然の恵みに感謝の祈りを捧げ、言い伝えを守りながら生きている。その中で、「ラマファ」と呼ばれるクジラの銛打ち漁師たちは最も尊敬される存在だ。彼らは手造りの小さな舟と銛1本で、命を懸けて巨大なマッコウクジラに挑む。2018年、ラマファのひとりであるベンジャミンが捕鯨中に命を落とした。人々が深い悲しみに暮れる中、舟造りの名人である父イグナシウスは家族の結束の象徴として、伝統の舟を作り直すことを決意。1年後、彼らの舟はまだ見ぬクジラを目指して大海へと漕ぎ出す。ライフワークとして30年間ラマレラ村の人々を追い続けてきた写真家・映像作家の石川梵監督が、2017年から19年までに撮影した映像を基に制作。自然とともに生きるラマレラ村の人々の日常を、繊細かつ臨場感あふれる映像で描き出す。
2021年製作/113分/PG12/日本